BMW RnineTは、そのクラシカルかつ重厚なデザインと、空冷ボクサーツインエンジンの独特な鼓動感で、多くのバイク乗りを魅了してきました。街中でもツーリング先でも「それ何のバイク?」と聞かれるほど存在感は抜群。筆者もそのルックスに一目惚れして購入を決めた一人です。
しかし、結論から言うと、最終的に私はRnineTを手放しました。今でも「カッコよさ」で言えばトップクラスだったと思いますし、所有していた時間に後悔はありません。ただ、手放したのにはいくつかの“理由”があります。そしてそれは、これからRnineTを検討している方にはぜひ知っておいてほしい現実でもあります。
RnineTには、見た目からは想像しづらいような注意点がいくつかあります。たとえば、「重い」「曲がらない」「エンジンがかからないことがある」といった物理的な特性や、不具合の声が多く見られる電装系のトラブル。さらに、国産バイクとは明らかに違う維持費の高さや部品の入手性といった、オーナーになって初めてわかる“壁”も存在しました。
それでも、RnineTを所有していたこと自体はかけがえのない経験です。このバイクが「合う人」と「合わない人」がいるのは確かで、そこを見誤ると、見た目に惚れて買ったけれど後悔…なんてことにもなりかねません。
この記事では、筆者自身が手放すまでに感じたリアルな後悔ポイントや、維持費・トラブル・取り回しのクセなど、実体験ベースで包み隠さず正直にお伝えしていきます。RnineTに興味がある方、購入を検討している方にとって、納得して選ぶための参考になれば幸いです。
この記事でわかること
・RnineTを手放した具体的な理由とその背景
・維持費や保険料など、気になるコストの実情
・オーナーが感じた“乗り心地”や“クセ”のリアルな感想
・故障や不具合にまつわる経験談と注意点
・RnineTが向いている人・向いていない人の違い
RnineTを手放した理由とは?実体験から語る“後悔ポイント”

BMW RnineTに惚れて購入したのは、まさに見た目の格好良さが決め手でした。無駄を削ぎ落としたネイキッドスタイル、クラシカルなフォルムに空冷ボクサーツインのメカニカルな存在感――まさに「大人の趣味バイク」と呼ぶにふさわしい佇まいで、一目惚れする気持ちも無理はないと思います。ですが、数年所有して実際に走らせてみると、少しずつ違和感やストレスを覚える瞬間が増えてきました。
まず気になったのが、街中や狭い駐車場での取り回しの重さ。RnineTの車重は約220kgあり、数値上は重すぎるわけではないのですが、重心が低く独特のフロント構造(テレレバー)もあって、ハンドルを切ったときに「曲がりづらい」と感じる場面が何度もありました。特にUターンや細い道では「ヒヤッ」とすることも。日常使いの中で、この小さなストレスが積み重なっていった感覚です。
加えて、維持費の高さと部品代の割高感も正直ネックでした。オイル交換一つとってもBMW純正にこだわればそれなりの金額になりますし、車検時に指摘された部品交換やメンテナンスも、国産バイクのように「安く済む」とは言えませんでした。もちろんBMWというブランドゆえに覚悟していた部分もありますが、コストパフォーマンスを重視する方には、負担に感じられるかもしれません。
また、実際に私が経験したわけではありませんが、RnineTはネット上でも“エンジンがかからない”というトラブルが多く報告されているのも事実。主にバッテリーや電装系の不具合が原因のようで、複雑な電子制御がかえってトラブルの引き金になっているケースも。長期保管後にセルが回らないなど、小さな不安要素が付きまとうのは否めません。
結果的に、見た目は今でも最高に気に入っていますし、「またいつか乗りたい」と思わせる魅力はあります。ただ、日々の使い勝手や維持コスト、取り回しなどトータルで考えたとき、「いまのライフスタイルには合わない」と判断し、手放す決断をしました。
・取り回しが重すぎると感じた日常使用
→ 停車・Uターンで想像以上にストレス
・曲がらない?独特なフロントのクセ
→ テレレバーが生む特有の“曲がりにくさ”
・維持費とパーツ代が国産とは別次元
→ オイル交換や車検、意外な消耗品コスト
・エンジンがかからない?電装トラブルとの付き合い
→ 実体験とネット上の“あるある”報告
・「かっこいい」だけでは乗りきれない瞬間
→ 見た目への満足感と“走り”のギャップ
取り回しが重すぎると感じた日常使用
RnineTを手に入れてまず感じたのは、「見た目はネイキッドなのに、なんだか取り回しが重い」という点でした。スペック上は約220kgと、リッターバイクとしては決して特別重いわけではありません。ところが、実際に乗り始めてみると、駐車場での取り回しや信号待ちでの立ちゴケ対策、ちょっとしたUターンのたびに、車体の重さとフロントまわりの独特な構造がじわじわと効いてきます。
特に影響が大きいのは、BMW独自のテレレバー式フロントサスペンション。この機構は減速時のノーズダイブを防ぐには非常に優秀なのですが、ステアリングフィールが「重たい・鈍い」と感じる原因にもなっています。実際、私は細い路地で曲がるたびに思った以上に膨らんでしまったり、車体の重さを支えるために無意識に神経を使っていたことが何度もありました。
また、クラッチのミートポイントが高めで繊細なため、取り回し中の再発進時にも気を遣います。坂道発進ではリアタイヤがグッと沈み込み、姿勢を崩さないよう気を張る必要もありました。こういった“ちょっとしたクセ”が積み重なると、日常的に乗るたびにじわじわとストレスに変わっていきます。
RnineTを所有していた頃は、週末のツーリングには問題なかったものの、コンビニに寄ったり、ちょっとした用事で出かける際に「この重さがちょっと面倒だな…」と感じることが増えていきました。最初は“所有する喜び”が勝っていたものの、やがてその喜びよりも、操作のしづらさや疲労感の方が勝ってしまった――それが、私が手放しを考え始めたきっかけの一つです。
曲がらない?独特なフロントのクセ
RnineTに乗っていて意外だったのは、「想像以上に曲がりにくい」というフィーリングでした。見た目はクラシカルなネイキッドで、取り回しも軽快そうに見えるのですが、実際に走り出してワインディングや市街地を走ると、どうにもフロントの動きに違和感を感じるのです。
その原因のひとつが、BMW独自のテレレバー式フロントサスペンションにあります。通常のバイクであれば、フロントフォークがサスペンションとしてもステアリングとしても機能しているのですが、RnineTではその役割が分離されており、ブレーキング時にフロントが沈み込まない「ノーズダイブを防ぐ構造」となっています。
確かにこれにより、高速走行時の安定性や直進性能は非常に優れているのですが、一方で前輪に荷重をかけながらリーンして曲がる感覚が薄くなるため、特に低速のコーナリングや細かいカーブでは「曲がっていく感覚が鈍い」と感じることがありました。特に峠道などでは、思ったよりもワンテンポ遅れて曲がるような挙動になることが多く、「自分のライン取りがおかしいのか?」と悩んだほどです。
慣れてしまえば扱えないわけではありませんが、この独特なフィーリングは国産バイクに慣れた方ほど戸惑う可能性があります。実際、RnineTのオーナーの中にはこの“曲がらなさ”を理由に手放す方も一定数見かけますし、私自身もこの違和感がどうしても最後まで拭えませんでした。
また、立ち上がりの加速で車体を倒し込む際にも、前輪が「入りにくい」と感じることがあり、そうなると自然とバンク角を控えるようになり、結果として楽しさが半減してしまうのです。スポーツ走行を求めるタイプではなく、穏やかな走りを好むライダーにとっては許容範囲かもしれませんが、操る楽しさを求める方には相性が分かれるポイントだと実感しました。
維持費とパーツ代が国産とは別次元
RnineTに乗っていて最も悩まされたのが、維持費の高さでした。購入時点ではある程度覚悟していたものの、実際にかかる金額は想像以上。特に、オイル交換・車検・パーツ交換など、定期的に必要になる出費のひとつひとつが国産車の1.5〜2倍ほどになることが少なくありません。
まず、オイル交換ですが、BMW純正の推奨オイル(CastrolやMotulの高性能グレード)を使おうとすると、工賃込みで1回あたり1.5万円〜2万円は見ておいた方がよいです。国産バイクであれば7,000円前後で済むこともあるので、差額は無視できません。
また、車検も割高です。RnineTのような輸入車は、ディーラーまたは輸入車対応の整備工場にお願いすることが一般的で、車検の基本費用だけで10万円を超えることも。さらに、年式が古くなると電装系や足回りの部品交換が発生しやすく、そのたびに数万円〜十数万円単位の請求が積み上がっていきます。
さらに驚いたのは、消耗品の価格と供給スピード。例えば、ウインカーやレバー、ミラーといった“軽微なパーツ”でさえも、純正品で1万円超えは当たり前。加えて、国内在庫がなければ海外取り寄せになり、納期が数週間かかることもありました。つまり、転倒やトラブル時に「すぐ直せない」というストレスが常につきまとうのです。
これらを総合すると、年間でかかる維持費はざっと20万円前後と見積もっておいた方が安心です。もちろん走行距離や使用頻度にもよりますが、国産250〜400ccクラスの2〜3倍と考えると、趣味として楽しむには相応の余裕が求められるバイクだと感じました。
RnineTは「所有する喜び」が非常に高いバイクであることは間違いありませんが、その裏で発生するコストが、じわじわと生活にプレッシャーをかけてくる――これも私が手放す決断をした、正直な理由のひとつです。
エンジンがかからない?電装トラブルとの付き合い
RnineTを所有していて、もっとも気をつけなければならないのが“電装系トラブル”です。私自身は幸いにも深刻なトラブルには至らなかったものの、ネット上のオーナーの声やディーラーの話を聞くと、「エンジンがかからない」「セルがうんともすんとも言わない」といったトラブルがちらほら報告されています。
特に注意すべきはバッテリーの管理です。RnineTは近年の電子制御技術を多く取り入れたモデルであり、エンジン始動や計器類はすべて電気任せ。少しでもバッテリーが弱ると、エラー表示が出たり、セルが回らなかったりといった症状が発生します。私の知人は、1カ月ほど乗らずに放置していたところ、キーをオンにしても全く反応せず、結局レッカーで運ぶことになったそうです。
この問題を避けるにはバッテリー充電器の使用や、こまめな乗車・管理が必要ですが、「バイクはたまの休日に乗る派」の方にとっては、正直かなり面倒なポイントです。加えて、電子キー(キーレス)やイモビライザーの誤作動報告もあり、こういった“ちょっとした不安定さ”がRnineTのウィークポイントのひとつだと感じます。
また、OBD(自己診断機能)によってエラーを検知すると、たとえ実害がなくても「故障モード」に入り走行不能になることもあると聞きます。こうなると、ユーザー側では手に負えず、ディーラーや専用ツールでのリセット作業が必要になるため、時間と費用の両方がかかるケースも珍しくありません。
こうした電装まわりのトラブルは、最新の電子制御バイクであればある程度避けられないものとはいえ、RnineTのように“クラシカルな見た目なのに中身はハイテク”なバイクだと、そのギャップに戸惑うユーザーも多いのではないでしょうか。私自身、「この見た目で、なんでこんなに繊細なんだ…」と何度も思いました。
「かっこいい」だけでは乗りきれない瞬間
RnineTを初めて見たときの衝撃は、今でもはっきり覚えています。無骨なフロントフォークにむき出しのボクサーツイン、どこか古き良き時代を感じさせる丸目ヘッドライト――そのすべてが、バイク乗りの「美学」を刺激するスタイリングでした。正直、見た目だけで買ったといっても過言ではありません。
所有する満足感は非常に高く、ガレージに停めているだけでうれしくなるバイクでした。出先の駐車場で「かっこいいですね」と声をかけられることもあり、所有欲はとことん満たしてくれる一台です。ですが、やはりバイクは「乗ってなんぼ」。この見た目に惚れ込んだがゆえに、乗り味とのギャップを埋めるのが非常に難しかったのです。
前述のように、RnineTは取り回しが重く、フロントのクセも強い。さらに、足つきも決して良いとはいえず、私の身長(170cm)ではつま先立ちになる場面も多く、Uターンや斜面での停車時には神経を使いました。また、クラシックな見た目とは裏腹に、走りには“気難しさ”がありました。とくに中速域での加速や旋回では、思い通りにいかないことも多く、素直なフィーリングを求めていた私は徐々に距離を置くように。
そしてある日、「ああ、このバイクは“眺めるため”に向いているんだ」と自覚する瞬間が来ました。ガレージで磨いているときは最高に幸せなのに、走り出すと「やっぱり違うな…」と感じる。つまり、見た目に全振りしているぶん、日常で付き合っていくには“許容できるクセ”の範囲が広くないと厳しいのです。
RnineTは、間違いなく「かっこいいバイク」です。でも、それだけで長く乗り続けられるか?と聞かれると、私にとっては「NO」でした。バイクに求めるものが“見た目”なのか、“扱いやすさ”なのか、“走りの質”なのか――そのバランスを誤ると、いずれ所有すること自体がストレスになってしまいます。これは、所有してみて初めて実感したリアルな教訓でした。
それでもRnineTは魅力的?“通好み”が惹かれる理由

RnineTを手放した私ですが、不思議とネガティブな感情は残っていません。むしろ「また乗ってみたいかも」と思わせる独特の魅力がこのバイクにはあります。バイクにとって“万能であること”は重要かもしれませんが、RnineTはむしろ真逆。万人受けしないからこそ、ハマる人には深く刺さるという、いわば“通好み”のモデルだと感じています。
実際、私のまわりでもRnineTを「一生モノの相棒」として手放さずにいるオーナーが何人もいます。彼らに共通しているのは、バイクに機能性や速さだけでなく、「心を揺さぶる何か」を求めている点です。例えば、空冷ボクサーツインの鼓動や独特なメカニズムに惚れ込んだり、クラシカルなデザインをこよなく愛していたり。RnineTは、そうした“感性に響く何か”を持っているからこそ、多くのファンを引きつけているのでしょう。
手放した理由があったとしても、それは必ずしも「バイクが悪かったから」ではありません。相性やライフスタイルの変化といった、“人側の事情”が大きい場合も多々あります。RnineTに限らず、趣味性の高いバイクとはそういうものだと割り切ることも大切です。
このセクションでは、なぜRnineTが「不便だけどやっぱり魅力的」と言われ続けるのか、その理由を深掘りしていきます。どんな人に向いているのかを再確認し、これから買おうとしている人が“後悔ではなく納得の選択”ができるよう、私なりの視点で整理してみたいと思います。
・デザインの完成度と存在感は唯一無二
→ どこに停めても“目を引く”クラシック感
・空冷ボクサーツインの鼓動感と音
→ クセがあるけど“病みつきになる”エンジン
・所有する満足感とブランドの魅力
→ 「BMWに乗っている」という優越感
・カスタムベースとしての楽しみ方
→ パーツ選びで“自分だけの一台”に変化
・合う人には“唯一無二の相棒”になる
→ ライフスタイルや好みに合えば長く乗れる
デザインの完成度と存在感は唯一無二
RnineTを語るうえで、まず外せないのが「デザインの完成度」です。これは所有していた私自身が強く感じていた部分で、日々見慣れていくはずの愛車に対して、毎回ガレージで惚れ直す――そんな経験をさせてくれたバイクでした。
クラシックな丸目ライト、無骨でシンプルなタンク形状、そして左右に張り出したボクサーエンジン。このすべてが「バイクって本来こういう乗り物だったよな」と思わせるような普遍的な美しさを持っています。国産車ではなかなか見られない、パーツひとつひとつの質感の高さも相まって、駐車しているだけでも周囲から一目置かれる存在感がありました。
実際、ツーリング先や街中のパーキングで「これ、BMWですか?かっこいいですね」と声をかけられることは少なくありません。国産のネイキッドやアドベンチャーと並べても、RnineTの持つ造形美はまったく埋もれず、むしろ一歩抜きん出る印象を与えるのです。
この完成された見た目は、カタログやWEBで見るだけではなかなか伝わりません。実物を目にしたときの「おおっ」と感じる立体感や、マフラーの取り回し、細部の金属感など、まるで芸術品のような魅力を感じさせてくれます。こうした“視覚的満足感”は、他のどのバイクでも得られないものでした。
もちろん、見た目だけでバイクを選ぶわけではない――そう思ってはいたものの、やはり日常的に「所有する満足感」を与えてくれるデザイン性の高さは、長く付き合ううえで大きなポイントです。いわば、RnineTは「乗る前から満足できる数少ないバイク」と言えるのではないでしょうか。
「人と被りたくない」「いつ見ても惚れ直せるようなバイクがいい」と思う方には、RnineTのデザインはまさに理想に近い選択肢になるはずです。
空冷ボクサーツインの鼓動感と音
RnineTの最大の個性といえば、やはり“空冷ボクサーツインエンジン”の存在でしょう。この独特な水平対向2気筒は、スペックだけでは語れないフィーリングを持っており、エンジンをかけた瞬間から「これはただの移動手段ではない」と思わせてくれます。
まず印象的なのは、アイドリング時の左右に揺れる鼓動感。国産の並列2気筒や4気筒では味わえない“機械としての主張”が強く、まるでエンジンが生きているかのような感覚を味わえます。ハンドルや車体を通して伝わる振動も、ただの騒音ではなく“心地よいビート”として感じられ、五感を刺激してくれるのです。
走り出すと、そのキャラクターはさらに際立ちます。低速ではトルクが太く、アクセルを少しひねっただけでもドンと押し出される感覚があり、「バイクを操っている」という実感が強く湧いてきます。一方で、高回転域ではシュンと回る軽快さはなく、エンジンが「そんなに急がなくていい」と語りかけてくるような、ゆったりしたリズム感があるのも特徴です。
そして、音。RnineTの純正マフラーでも十分迫力がありますが、社外マフラーを入れると、さらにボクサーツインらしい「ドコドコ」という重低音が響き渡り、音そのものが一種の快感になります。アクセルの開け閉めだけで“音の演奏”を楽しめるバイクは、そう多くありません。
もちろん、クセがあるのも事実です。エンジンブレーキは強めで、渋滞時の扱いには気を使いますし、低速域ではギクシャクする場面もあります。でも、それを差し引いても、あの鼓動と音に惚れてしまう――まさに「病みつきになるエンジン」なのです。
エンジンに“魂”を求める人、乗るたびに感情を揺さぶられたい人には、この空冷ボクサーツインは唯一無二の魅力を放っていると思います。
所有する満足感とブランドの魅力
RnineTに乗っていた時、バイクそのものの性能やデザイン以上に、日々感じていたのが「所有していることの満足感」でした。これは決して見栄の話ではなく、BMWというブランドが持つ“存在価値”そのものが、日常にちょっとした高揚感を与えてくれる感覚に近いと思います。
BMWというと四輪の高級車ブランドとしてのイメージが強いですが、バイク部門である「BMW Motorrad(モトラッド)」も、実は長い歴史と技術の蓄積がある世界的な老舗ブランドです。その名を冠したRnineTに乗っていると、まるで「伝統と哲学を跨っている」ような気分になります。
特にバイク仲間の中でも、BMW乗りというのは少し特別視されるところがありました。珍しさもありますが、選ぶ人の“こだわり”や“大人の趣味性”が感じられるのか、よく「やっぱ違うよね」と言われることも。これがまた、ちょっとした誇らしさにもつながっていました。
また、BMWのバイクは“買ってからが本番”という側面もあります。全国に正規ディーラー網が整備されており、メンテナンスやサポート体制がしっかりしている安心感も大きな魅力。アフターサポートの手厚さは、長く乗るうえでかなり重要なポイントだと実感しました。
そして何より、RnineTというモデルは「BMWの中でも通好み」という立ち位置にある点が面白い。万人向けではない分、選ぶ時点で「このバイクの良さを理解している人」だけがたどり着く――そんなイメージがあります。それがまた、所有者にとっての“ステータス”にもなり得るのです。
結局、RnineTは「何に乗るか」だけでなく、「何を大事にするか」という価値観そのものを映し出すようなバイクでした。その意味でも、BMWというブランドを選ぶこと自体が“自己表現のひとつ”だと感じさせてくれました。
カスタムベースとしての楽しみ方
RnineTを手に入れたとき、最もワクワクしたのが「カスタムの自由度」でした。もともとBMWがこのバイクを“カスタム前提モデル”として設計していることもあり、標準状態でもシンプルで無駄がなく、いじりがいのある土台ができています。言い換えれば、「ノーマルは未完成」というような、遊び心をくすぐる一台です。
まず、国内外問わずカスタムパーツが豊富です。ハンドルやミラー、シート、ウインカーといった定番から、フロントフォークやマフラーまで、選択肢はまさに無限。しかもBMW純正のオプションも用意されていて、“安心していじれる”環境が整っているのもRnineTならではです。
私自身も、納車してすぐにバーエンドミラーを装着し、次はマフラー、シート、テール周り…と少しずつ手を入れていきました。その過程で感じたのは、「このバイクはカスタムの変化がとにかくわかりやすい」ということ。たとえばミラーを変えるだけで、クラシックな印象が引き締まり、走る姿にも“オーナーの色”がにじみ出てくるようになるのです。
また、イベントやカフェミーティングなどで出会う他のRnineT乗りと話すと、それぞれがまったく違うスタイルに仕上げていて面白い。カフェレーサー風、スクランブラー風、あるいはネオレトロな方向など、同じベース車両からここまで個性が出るのかと驚かされました。
何より、自分で選んだパーツを取り付けて走る瞬間は、「これが自分だけのRnineTなんだ」と強く感じられます。メーカー完成品に“個性”を加えていく行為が、バイクとの距離をぐっと近づけてくれるのです。
RnineTは、カスタムによって進化していく楽しみを味わえる、まさに“育てるバイク”。その過程こそが、オーナーにとって最大の魅力になると言えるでしょう。
合う人には“唯一無二の相棒”になる
RnineTを手放した私が思うのは、「これは決して誰にでも合うバイクじゃない」ということです。だけど裏を返せば、“合う人にとっては唯一無二の存在になり得る”とも言えます。これは、私自身が一度オーナーとして向き合ったからこそ感じることでもあります。
例えば、スピードや軽快さ、実用性だけを重視する人にとっては、RnineTの「重さ」や「取り回しの難しさ」はネックになるかもしれません。しかし、バイクに“感情”を求める人――つまり、エンジンの鼓動感、乗るたびに心が動かされる体験、週末に磨いて眺める時間も含めて愛でたい人には、このバイクほどマッチする存在はないと感じます。
空冷ボクサーツインの個性あるフィーリングや、クラシックなルックスと現代技術の融合、そして「BMWらしさ」のある上質な作り。こうした要素を「クセ」だと感じるか、「味」だと感じるかで評価は大きく変わります。RnineTはまさに、そうした“バイクとの相性”を問いかけてくる一台です。
また、ライフスタイルとの相性も非常に大きいと実感しました。毎日通勤で使うような用途には不向きですが、週末に郊外を流す、カフェでゆっくり過ごす、イベントやツーリング仲間と非日常を共有する――そうした“豊かさ”を求める乗り方にはぴったりです。
そして何より、所有する満足感や他人と違う道を選んだという自負が、「長く付き合いたい」という気持ちを育ててくれる。実際に、SNSやブログなどを見ていても「もう何年もRnineTに乗り続けている」というオーナーは少なくなく、むしろ年月とともに愛着が増していくようです。
私は手放しましたが、今でも時折「やっぱりあのバイク、特別だったな」と思い返すことがあります。合う人にとっては、本当にかけがえのない“相棒”になる――それがRnineTというバイクの、最大の魅力かもしれません。
まとめ|RnineT 手放した理由を語るからこそ見える“本当の魅力”
RnineTを手放した理由について、ここまで正直にお伝えしてきました。確かに、維持費や取り回し、日常での扱いやすさなどにおいて「万人向けのバイク」ではありませんでした。けれど、だからこそ見えてきたのが、RnineTが持つ“通好みの魅力”です。
見た目の美しさ、空冷ボクサーツインの味、そしてBMWブランドならではの満足感。カスタムの自由度も高く、乗り手の好みに合わせて育てていける楽しさもありました。結果として「手放した」選択をしたものの、それはあくまで自分のライフスタイルや価値観に合わなかっただけであり、バイクとしての完成度に疑いはありません。
むしろ、合う人にとっては“唯一無二の相棒”になり得る、そんな一台。誰もが選ぶわけではないけれど、だからこそ愛する人にとっては強烈な魅力を放つ――RnineTはそんなバイクです。この記事が、これから購入を検討している方にとってのひとつの判断材料になれば嬉しく思います。